第26回EMWA conference参加報告
ノバルティス ファーマ株式会社 安藤 聡美
日本のゴールデンウィークの真っ只中4月29日から5月3日までの期間,European Medical Writing Association (EMWA)の第22回年会がスペインのバルセロナで開催されました。今回の参加者数は約400名で,最初に参加した6年前に比べるとほぼ2倍の規模です。参加者のほとんどはヨーロッパ各国からですが,アメリカやアジアからの参加もみられました。日本からの参加は筆者を含めて7名でした。

今年のワークショップ数は48個と過去最高で、このうち11個は今年新規に追加されたものです。新規追加は「Systematic Reviews」「The CTD Clinical Summary」「Beyond Simple Editing」 「Writing PowerPoint Slide」などですが,いずれもクレジット取得の対象外です。筆者は参加登録が遅れたため,目的のワークショップのいくつかはすでに満席だったのですが,幸運なことに,Tom Lang先生(How to report statistics in Medicineの著者)が3年ぶりにEMWAのワークショップリーダーとして復帰されたので,個人的に無理をお願いし,彼のワークショップ2つ(「Interpreting and Reporting Measures of Risk」, 「Interpreting and Reporting Diagnostic Test Characteristics」)を受講することができました。 ワークショップのスナップ
ワークショップのスナップ

今年の年会の特別テーマは「翻訳」(Scientific and medical translation)でした。2007年は「コミュニケーション」,2006年は「eCTD」が特別テーマでした。「翻訳」は,多数の言語が存在するEUならではの企画だと思います。EU諸国では,「中央承認方式」で医薬品の承認を取得した場合も,添付文書は各国の言語(27ヶ国語)に翻訳されて市場に供されることになります(翻訳期限は非常にタイトです)。セッションでは,「効果的な翻訳とは」,「単に単語の置き換えでは済まないヨーロッパ言語間の翻訳の問題」,「翻訳者の将来の専門家としての位置づけ」などが議論されました。事前に,セッションチェアの一人から,ぜひ日本の医薬品企業での翻訳の状況を話してほしいと依頼されていたので,日本語−英語間の翻訳の問題を,EU言語間のそれとは根本的に性質を異とするが,同様に存在することを,事例を挙げて紹介しました。

サグラダファミリア
サグラダファミリア
EMWAでも,さまざまなソーシャルイベントやランチョン・ラウンドテーブルディスカッションが企画されます。これらはメンバーとのネットワーキングの貴重な場でもあり,その地の名所や名物に触れるという機会以外に,別の楽しみにもなっています。筆者も2日目の夜にWalking tourに参加しました。そこで同席したEMWAの機関紙(The Write Stuff)の編集長から,図らずも,日本のメディカルライティングの状況や医薬品承認プロセスについて紹介する記事の執筆依頼も受けてしまいました。

今年は写真コンペが開催され,日本から参加した一井さん(大日本住友製薬)の写真が入賞しました。初日のバンケット風景を撮ったもので,EMWAのホームページと機関紙に掲載されています。EMWAはAMWAに比べると歴史も浅く,プログラムも限定的ですが,年々システム,プログラムともに充実してきています。日本では、質的にも量的にもこれらと同様の教育プログラムを提供することはまだまだ難しいと思いますが,JMCAをひとつの基軸として,医療情報コミュニケーションに関する教育プログラムが徐々に整備されていくことを期待します。EMWAのプログラムは2004年の総会でも発表の機会をいただきましたし,ホームページhttp://www.emwa.org/でも紹介されています。ぜひ一度閲覧してみてください。今年の秋季セミナーは11月にロンドンで,2009年春季年会はリュブリャナ(スロヴェニアのプチ首都)で開催されます。 バンケット風景(入賞した一井さんの作品)
バンケット風景
(入賞した一井さんの作品)